ハチミツ的な何か ?ブーン系小説短編まとめ?

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('A`) ドクオは温もりを感じるようです


1 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 19:50:28.08 ID:jeDL7Wva0
身体の節々が痛む………
どうやら昨日の“運動”が激しすぎたらしい。

今日は丸一日寝てるか、どうせ今日は休みだ。
昨日が休日前で本当に助かった。

こんなに身体が痛むってのに仕事だなんてやってられない。

週に一度あるかないかの休日を眠って過ごすのは些か勿体無い気もするが
体調管理が第一だ。

そうだ、このまま二度寝しよう。

身体に覆いかぶさる布団が柔らかく気持ち良い
その上このクソ寒い部屋の中に居るのにも拘らず、俺の身体を温めてくれる。

なんて優しいんだ。
この愛情に飢えたモテない男にこの優しさはとても嬉しい。

そして暖かい。

出来れば女の肌の温もりで暖まってみたいもんだが
俺には無理な話だな、こればかりは。

('A`) 「どうせ、休みでも楽しそうなことなんて何もねぇしなぁー」

俺はそう呟くと、目を擦って起きようとする。


3 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 19:54:38.88 ID:jeDL7Wva0
だが、目覚めたばかりで開き切らない瞼が異様に重く感じる。
そうだ、このまま中々開かない瞼を閉じてしまえばいいんだ。

そうすればせめて夢の中では心も体も温まることも出来るかもしれない。

('A`) (でも、それは現実逃避にしか過ぎない、逃げ続ければいずれはツケが回ってくる)

頭の中で呟くと、俺は寝返りを打つ。
いや、たかが休日の過ごし方に本気になり過ぎだろ俺。

いいや、もういいよ。寝る。

瞼を完全に閉じ、意識を全て断ち切り
俺は徐々に眠りに落ちていくのを微かに感じた。


4 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 19:59:09.15 ID:jeDL7Wva0
玄関の方で小さな音がする。

何の音だろう?
だが、俺は気にせずに眠りにつくことにした。

俺の眠りを妨げない程度の物音だ、
そんな物に神経をすり減らすつもりはない。

再び眠りに落ちていくのを感じ、
やっと眠れるのか、と安堵する。

だが、どうやら俺は眠れないようだ。

ドアの開く気配を感じ取った俺は枕元に忍ばせてあった拳銃、
グロック26という小型の拳銃を取り出してドアへ銃口を向けた。

さっきの音は足音だったのか……

音の数からして侵入者は1人。

確かに家賃が格安で防犯設備もクソもないボロアパートに住んではいるが
こうも堂々と侵入してくるとはな。

俺が潜入の仕方について教えてやろう。
授業料は高くつくぞ………


6 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 20:03:17.20 ID:jeDL7Wva0
もっとも、この部屋には金目の物なんぞ無い。

まさに骨折り損のくたびれ儲けだ。
俺としてはいい暇つぶしにはなるがな。

ドアが開き引き金に乗せた指に力を込める。
しかし、それを引きはせずに安全装置を掛けて枕元へと仕舞う。

開かれたドアの向こうに見知った顔が現れたんだ。

艶やかな黒真珠のように美しい黒い長髪の女性。
クーが物のたくさん入ったビニール袋を持ってこの部屋に入って来た。

川 ゚ -゚) 「おはよう、ドクオ。朝の挨拶が別れの挨拶にならずにすんで良かったな」

うっせー、皮肉のつもりか?
つーか何で入ってきてんだお前は? 鍵は閉めてたはずだぞ………

('A`) 「どうやって入ってきた?」

川 ゚ -゚) 「私に合鍵を預けておいたのを君は忘れているのか?
      寝惚けてるのならいいが、記憶力が低下しているのなら問題だな」

(;'A`) 「あー……悪い。忘れてたわ」

川 ゚ -゚) 「問題だな」


8 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 20:07:08.48 ID:jeDL7Wva0
そういうわけでおやすみ。
愛想の欠片も見せずに俺は布団に包まって目を閉じた。

川 ゚ -゚) 「起きろよ、ダメ人間め。休日だからと言ってだらけるべきでは無い」

(-A-) 「休日だからこそだらける。オンとオフを切り替えることが、ながーい人生には必要なんだ」

瞼を閉じつつも、尤もらしく理屈を述べて眠りにつく。
どんな来客で有ろうとも、自分の生活リズムを変える気はない。

川 ゚ -゚) 「朝飯を作ってやるから起きていろ、その後は眠っても構わない」

(-A-) 「努力はさせて貰うよ、でも何であんたがそんなことしてくれるんだい?」

俺は瞼を薄く開けてビニール袋を見る。
すると、その中身は幾つかの生鮮食品と大量の缶が詰まっていた。

缶の中身はその外装からしてビールだと俺は思う。
どっちがダメ人間だ、朝っぱらから酒を飲む奴の方が余程ダメ人間だろ!

頭の中で叫ぶが、決して愛酒家の方達をダメ人間呼ばわりしたわけではない。


11 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 20:10:44.34 ID:jeDL7Wva0
クーはビニール袋に手を入れて
この家の中では全く使われることの無いキッチンに食材を並べ始めた。

そうしてビールを取り出し、俺がそれに注目してることに気付いたらしく

川 ゚ -゚) 「ん? あぁ、これか? 君は朝から酒を飲む性質の者かと思ってな」

どうやら、俺の中で言う余程のダメ人間に彼女の中では分類されているらしい。

うん、ダメ人間らしくこのまま寝ちまおうか。
幸い、この程度のやり取りでは俺の眠気は冷めないようだしな――――


13 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 20:13:39.88 ID:jeDL7Wva0
******

身体が重い……身体が痛い……火薬臭い…………周りがうるせーっ!!

俺は歩いていた、廃墟の中を。
弾丸が飛び交い、阿鼻叫喚と大地を揺るがさんが如く轟音が響き渡る戦場という地獄の中をただ、歩いていた。

歩いていた。生き延びる為に歩いていた。

戦場の中から逃げきる為に、仲間に救ってもらう為にだ。
今襲われれば俺は為す術もなく殺されてしまうだろう。

俺の両腕は塞がれている。
仲間を背負う為に俺は腕を背中に回したのだ。

一蓮托生。

俺はこいつを見捨てることは出来ない。

こいつと共に戦って、戦って、戦場という戦場を戦い尽くし
生きて、生きて、生き延び続けてきた。

今更こいつを見捨ててまで生き延びようとは思わない。
そんな風に思える仲間はこいつだけじゃない。
俺が向かう先にはそんな奴らがまだいる。


15 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 20:17:10.75 ID:jeDL7Wva0
共に生き延びてきた、仲間が。

(メ'A`) 「おい、生きてるか? まだ死ぬんじゃねーぞ。死ぬなら死ぬで皆に看取られて死んでいけ」

俺は背中の女に呼びかける。

(*-∀-) 「心配しなくていいよ」

背中は弱々しくも短くそう応えた。

良かった。背中に感じる体温が低くなってきたので
俺は心配になって聞いてみたのだが、無駄に体力を消耗させることになった、と我に返り反省。

無駄に体力を消耗したのは俺も同じ。

仲間達の居る元には俺一人でも辿りつけるのかも分からないのだ。
無駄な行動はお互いの為にも極力避けるべき。

この女は名前をつーと言い、俺はこいつの後輩にあたり、
俺達は“GJ”という部隊に所属しており、数多くの戦場を回って来たのだ。

そして、輸送ヘリコプターによって俺達はこの戦場にやって来た。


17 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 20:19:48.28 ID:jeDL7Wva0
******

目標地点に辿り着くか辿り着かないかのその時
俺達の乗っていた輸送ヘリコプターは大きく揺れた。

その時は少々揺れただけかと思ったが
パイロットの青白い顔を見て、俺は悟ることとなる。

ああ、落ちるな。そう悟った。
俺はその場で大声で、機内に響きわたるように叫んだ。

(#'A`) 「落ちるぞ! 衝撃に備えてどこかに掴まってろ!!」

叫んだ時には既に遅く
ヘリコプターは既にくるくると独楽のように回り始め
俺の視界は目まぐるしく回転し始めた。

結果、俺達は目標地点から大きく外れて墜落。

俺達の国の軍隊―――ニューソク軍の勝ち戦を勝ち戦として
終止符を打つべく増援としてやってきた俺達は、敵の最後の抵抗とでも言わんばかりの攻撃によって
搭乗していたヘリコプターを落とされてしまったのだ。


19 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 20:22:01.60 ID:jeDL7Wva0
だが、運良く(悪いとも言えるが)俺とつーは生き残った。
生き残り、友軍の拠点へと歩き続けて今に至る。

そう逡巡しつつも歩き続ける。
砲撃によってコンクリートが爆ぜて土だらけとなった道を歩く。

ザッザッ、という足音が歩みに続く。

それはこの場を取り巻く轟音に掻き消されてしまいそうだったが
確かに俺の耳には届いていた。

自分の体を打つ鼓動や足音が、異常なまでに自分の中で大きく聞こえるのだ。
そんな中、それらとは違う音が聞こえた。

ヒュー、という花火が空に登っていくような音だ。

まずいっ!

その思いが頭に浮かぶ数瞬前には俺は走り出していた。
走っていた。すると、衝撃が背中に襲いかかり、前のめりに吹き飛ばされてしまう。

砲撃されたようだ。
気が付くと地面に顔を埋めていた。

腹を強く打ちつけたみたいだ。
痛みに顔を歪めると、背中が軽くなっているのを感じる。

背中が軽い?


22 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 20:25:45.46 ID:jeDL7Wva0
(メ;'A`) 「つーっ!?」

つーが俺の背中に居なかったのだ。

恐るべきことだが、信じられないことだが
どうやら砲撃された際に仲間は吹き飛ばされたようだ。

俺は狼狽してあたりを見回す。
すると、俺の約2mほど前方に這いつくばっていた。

とりあえず安心し、つーの元へ駆け寄り
彼女の体に腕を回そうとする。

だが、それを拒むように俺の腕は跳ね退けられてしまう。

(* ∀) 「ドクオ、もういいよ。どうせあたしは助からないだろう?」

彼女の腹には包帯が巻きつけられているのだが
その白い帯からは大きな赤い斑点が滲みあがっていた。


24 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 20:28:03.92 ID:jeDL7Wva0
つーの顔に大粒の汗が霜が掛かっているかのように浮かび上がる。

(メ'A`) 「あん? なんだよ、ここまで人に背負わせておいてそれはないんじゃないの?」

(*゚∀゚) 「いやー冷めてるなー、ドクオもギリギリだろ? だったらお言葉に甘えて身捨てちゃえよ!」

(メ'A`) 「うるせー、それはあんたの甘えだよ。俺はピンピンしてるわ。
     苦い思いをしてでも生き延びろよ。フサに会いに行くんだろ?」

フサ、つーの恋人であり俺の戦友だ。

(*゚∀゚) 「じゃあ言っといてよ。“再会できなくてゴメン”ってさ」

(メ'A`) 「無駄に話すんじゃねーよ。体力が減る」

(*#゚∀゚) 「じゃあ!……無駄なんて言うんならっ!! とっとと身捨てちまえよ!!」

つーは堪え切れないと言わんばかりに怒鳴り散らした。

(メ'A`) 「たとえ、後一分の命でも命は命だ。一分でも多く生きて見せろよ!」

冷静に言ったつもりが、語尾に多少の力が入ってしまう。


26 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 20:31:38.64 ID:jeDL7Wva0
(メ'A`) 「俺もこのままだったら死んじまうかもしれない! 野垂れ死ぬかもしれない!
     でも俺はっ! 最後の最後まで自分貫いて死んでくぞ! 最良の、最後に自分に誇れる生き様を貫く!」

気付くと、俺は大声を上げていた。

これこそ体力の無駄だ。だが、黙ってはいられない。
ここで引いてしまえば、俺はつーを救えない。

否、俺は自分を救えない。
つーを救うことで俺は自分を救う。

最良にして最後の自分に誇れる生き様を貫く。
そうしなければ自分が自分で無くなり
今まで戦ってきた意味が無くなってしまうような気がするのだ。

生きて来た意味が無くなってしまうような――――


29 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 20:34:31.45 ID:jeDL7Wva0
(* ∀ ) 「フフフ………」

(*゚∀゚) 「アッヒャヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ!
     アヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!
     アヒャーヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!
     アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」

突如、つーは笑いだした。
それは普段の明るい彼女からは想像も付かない程に禍々しく、狂気を孕んだ笑い方だ。

(メ;'A`) 「つー………?」

そんな彼女に対し、若干の恐怖を覚えつつも
彼女の名前を呼んでみる。

すると、つーはベルトに付けられた鞘からナイフを抜き取って
襲いかかって来た。

右から刃が迫り、バックステップで避ける。

反応が遅かったらしく頬に赤い線が薄く刻まれてしまう。


31 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 20:39:39.89 ID:jeDL7Wva0
(メ;'A`) 「ッ!?」

(*゚∀゚) 「ガキの癖に生き様だ? 大したこと言うじゃねーかドクオ。
     一分の命でも命は命。良いねぇ。ならあたしは自分に誇れる生き方をしよう」

(*゚∀゚) 「付き合ってくれるな、ドクオ? あたしはあんたと戦ってみたかったのさ!
     幼くして兵士となり、人生を大人の何倍もの戦いに打ち込んできたあんたとなぁ!!」

ナイフの切っ先を俺の顔に突きつけつつもつーが語る。

(メ#'A`) 「それがあんたの選択か!? フサはどーするんだ!!」

(*゚∀゚) 「アッヒャッヒャッヒャッヒャ! 最良の選択をしたまでだぁ!
     来いよクソガキ! 人生で最高の最後を迎えようじゃねーかぁっ!!」

つーが突進し、斬りかかる。

横に一閃され、再び俺はバックステップで避け
ナイフをつーと同じように抜いた。

一閃するかと思われた刃は俺の胸の辺りまで
振るわれると、そのまま鉛色の先端が左胸へと直進してきた。

鞘からナイフを抜くが早いか、俺はそれをナイフの腹で受けた。
そのまま足を振り上げ、つーの腹を蹴り上げる。


32 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 20:42:59.43 ID:jeDL7Wva0
俺よりも酷い傷を負ったつーはそれだけで致命傷にも近いダメージを負ったようで
彼女はその場で膝を附く。

附く、附いたのだが!

彼女は片足で地面を蹴り上げそのまま再び斬りかかった。

虚を突かれ、右下から振るわれたその刃を受けることが出来ず
独楽のように一回転してそれを避けた。

刃を避けられ、前のめりになった体をそのまま反転し、
同時に刃を彼女は振るい、俺はナイフで受けとめる。

受け止め、刃を返して往なす。
そのまま一閃するが、つーは紙一重で反応して鉛色の刃で防ぐ。

甲高い金属音が鳴り響き、
刃と刃が擦れ合う。

その度に耳障りな音が発し、互いに力と力をぶつけ合う。


34 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 20:45:39.16 ID:jeDL7Wva0
俺は男でつーは女だ。

そこには男女の力の差があるはずであり
つーのほうが深刻な怪我を負い弱っているはずなのだが何故か互角だった。

断言しておく必要もないが俺は手を抜いてはいない。

手を抜けばこの均衡を保った力のぶつかり合いは
一気につーへと傾き、俺は敗れ、殺されてしまうだろう。

火事場の馬鹿力というやつか?
頭の真中に疑問を浮かべると彼女の瞳が目に入った。

彼女の釣り上がった鋭い瞳――――

そこには鋭い瞳の奥に戸惑いと悲しみ、苦しみを滲ませたかのように
哀れな眼をした黒髪の少年が映っていた。

今にも泣きだしそうな少年が―――俺が映っていた。


35 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 20:48:48.14 ID:jeDL7Wva0
俺しか映っていなかった。
目前の敵しか彼女の瞳には映っていないのだ。

つーの不思議な、恐ろしいまでの力の正体。

それは、この一戦に己の全てを掛けた戦士の力。
これに勝つためならば己の命すらも掛け金として投げ打つ、覚悟の力!

覚悟の違いなのか。
俺は彼女は生粋の戦士なのだと思い知らされる。

生粋の、力と力のぶつかり合いのみを求めて彷徨う戦士。
生粋の狂戦士。純粋な戦士とも呼べるかもしれない。

それに気付かされた途端に俺のナイフは振り上げられた。


37 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 20:51:39.17 ID:jeDL7Wva0
(メ'A`) 「ッ!?」

(*゚∀゚) 「アヒャヒャヒャッ!」

ふと、我に返るが時既に遅し。

つーは切っ先を俺の左胸に向けて突き上げる。
俺はそのままナイフを手放し、後ろに跳んだ。

つーはナイフの達人だ。

彼女のナイフを振るう速度に男女の差など既に無く
人類がナイフを振るえる速度の限界に近いとも言えるだろう。

だからと言って俺は彼女に大きく劣るわけでは無い。

今もまた、ナイフは素早い動きで
俺の下腹部へと向かってきている。

だが、彼女がナイフの達人であるように
俺もまた――――早撃ちの達人だ。

跳躍して間合いを稼ぎ、彼女の最速の刃が迫る時間を稼ぐ。


39 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 20:54:39.73 ID:jeDL7Wva0
そうして俺は腰のホルスターからハンドガンを抜き取り
ナイフが刺さるか刺さらないかギリギリのところで彼女を撃ち抜いた。

彼女の体に次々と赤い点が出来ていき
銃撃を受けた衝撃で彼女は倒れていく。

が、倒れない。

俺が支えたからだ。

つーの背に腕を回すと彼女の重みが乗りかかる。
その重みには力が無く空気の抜けたボールを握っているような感触だ。

(*;゚∀-) 「アヒャ、ドクオ……お前……ここまでしておいて今更助けるとか言わないよな?」

苦しそうにつーは言う。

(メ;A;) 「言わないよ、でも勝負はついたろ?」

俺は応える。言葉が上ずり発音出来ず、自分が泣いていることに気付いた。

(*゚∀゚) 「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ! 良い子だ!!」

そんな俺を見て、つーは笑った。
死の間際だと言うのによく笑う。


41 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 20:57:52.69 ID:jeDL7Wva0
いや、死の間際だからこそ笑っているのかもしれない。

笑いながら、彼女は俺の首に腕を回し
そのまま自分の顔を俺の顔に引き寄せると彼女は俺の唇に吸い付いた。

一瞬のことだった。

一瞬の内に、俺の口腔に彼女の血が送られる。
鉄臭く、とても美味いとは言えない物だ。

そうやって俺に血を吐きだし続け、
俺の口腔が鉄の味で充満する頃には彼女は力を無くしたように倒れていった。

無くしたようにではなく、実際に無くなったのだろう。
生きる力を失ったのだ。

俺は体中血塗れだった、体の中も外も彼女の血で塗れている。

血は生暖かく、つーに抱きしめられているような
不思議な、不思議で不気味な温もりを感じていた。

何時の間にか俺の涙は枯れていた。
だが、体は血によって潤っている。

俺はフサに“再会できなくてゴメン”とつーの伝言を伝える為に
ボロボロの体に鞭を打ってこの戦場を切りぬけて行った――――


43 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 21:00:20.38 ID:jeDL7Wva0
******

川;゚ -゚) 「ドクオ? 大丈夫か?」

('A;) 「ッ!?」

俺が目を開けるとそこには心配そうに俺を見つめるクーが居た。
シャツは汗のせいでじわりと滲んでおり、瞼には薄っすらと涙が伝っている。

そして、口の中にはあの時の鉄臭い血の味が蘇り、
胸の内がムカついて来て腹の奥から喉まで何かが登って来るような感覚に襲われて嘔吐しそうになった。

思わず口を塞ぐと、クーは空になったビニール袋を差し出してきた。

俺は片手でそれ拒み、「大丈夫だ」と視線を送る

川 ゚ -゚) 「風邪か? 酷くうなされていたぞ? 病院に行こうか?」

(;'A`) 「あー、ゴメン。大丈夫だ、風邪じゃないよ」

川 ゚ -゚) 「なら悪夢か、お前にも可愛いところがあるんだな。
      仕事だけが取り柄の上にそれほど優秀でも無い奴だと思っていたんだがな」

(;'A`) 「酷いなアンタ。パワハラか?」

川 ゚ -゚) 「フッ、冗談だよ」

僅かに口を釣り上げて、彼女は笑ってみせる。


45 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 21:04:34.96 ID:jeDL7Wva0
川 ゚ -゚) 「朝食、出来てるぞ」

そう言い、彼女はテーブルを手で指した。

テーブルの上にはサラダと目玉焼きにトーストが乗せられて居る。
典型的な朝食だ。

それは、作られたばかりのものかと思ったが
見るからにそれらは冷え切っており、作られてから数時間が経過していることが予測された。

あー、俺が寝ちゃってたからか。

寝るなよと言う割には起きるまで待っていてくれてたんだな。

それは優しさか、それともうなされている俺を見て
起こさない方がいいと判断したのかは分からないが。

とにかく、俺は前者だと判断する。
両者であるともとれるが――――


46 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 21:06:39.71 ID:jeDL7Wva0
(;'A`) 「あー、ごめん」

川 ゚ -゚) 「上司に食事を作らせ、あまつさえ待たせるとは、お前も胆の座った男だな」

(;'A`) 「すいませんでしたっ!!」

とりあえず土下座。
床に頭を擦りつけ、出来る限り頭を低くする。

川 ゚ー゚) 「フフフ、今日はオフの日だろ?」

頬を緩めて彼女は笑い、冗談で返した。

(;'A`) 「あぁ……やられたかな?」

川 ゚ -゚) 「やってしまったよ」

そういったどうでもいいようなやりとりをし
俺は朝食を取った。


47 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 21:09:40.24 ID:jeDL7Wva0
******

朝食を食べ終えると
クーはビールを取り出した。

朝から酒なんて飲んでいいのか?と思い、
時計を見ると既に15時を回っていた。

クーさん、本当にすいませんでした。
内心に呟くにだけに留めて俺はビールを呷る。

とりあえず飲む。飲みまくる。
それに合わせるようにクーも大量に飲んだ。

いや、合せるようにでは無く、競うようにかな?

合せるようにでは彼女に申し訳ないので
競うようにと勝手に自己解釈した。

だが、彼女の為に自分は少し控えるべきだと思い
飲むペースを落とす。

彼女はペースを全く落としはしない。
むしろどんどん上がって行った。


50 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 21:13:34.25 ID:jeDL7Wva0
えー、俺の気遣いは?

気遣いでは無く、勘違いなんだけれどもね。
てか、あんた自分が飲みたくて買ったんだろそれ。

クーは早くも買ってきた分を飲みきり
俺の冷蔵庫を開け、その中にある酒までも飲み始めた。

あー、俺のビールが、ワインが、日本酒が……

まぁいいか。

俺如きが女性に朝食を作って貰えたという幸運に対して
その結果買い込んだ酒を全て飲まれると言うなら安いものだ。むしろ本望である。

それに、普段堅物な彼女の酒乱としての一面を見られて
嬉しくもある。

あー、このまま脱いでくんねーかなー。

頭の中が煩悩に支配されつつあると
彼女は俺の目の前にアルミ缶を片手でグイと押しつけた。

川 ゚ -゚) 「飲め」

彼女は短くそう言い、俺が飲むのを待つ。

彼女の白い肌は赤く染まり上がっているが
普段の無表情は崩されていない。まるで強迫しているかのようだ。


51 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 21:16:39.89 ID:jeDL7Wva0
飲みますよ、と嘆息を漏らしつつも俺はアルミ缶に手を付けた。

川 ゚ -゚) 「一気、一気、一気、一気」

…………無表情ではあるが、中身は相当出来上がっているらしい。

無感動な瞳で一気飲みを促すクー。
表情のない奴に言われるとなんか怖いな。

あー、酒の勢いで童貞卒業とか無いかな?

20代後半で童貞な俺は一抹の煩悩を抱き
一気にアルミ缶の中身を飲み干した。

甘く、強烈な炭酸が口の中で弾けていった。

('A`) 「ん?」

俺はその味に若干違和感を覚える。
すると、クーは僅かに口を釣り上げて笑った。

川 ゚ー゚) 「フフフ、それはコーラだよ。ビールと間違う程に酔っぱらってしまったか?」

無表情で、無感動な声でそう言われた。

(;'A`) 「あんたのほーが酔ってるだろ、絶対!」

そう言って俺はビールの入ったアルミ缶を手に取り
一気に飲み干すと、少々眠くなってきた。


53 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 21:20:36.17 ID:jeDL7Wva0
時計を見ると、既に17時だ。
まだ寝足りないのかな?

まぁいい、寝るか。
眠い時に寝られるのが何よりの幸せだ。

酒気を帯び、火照った体をベッドに乗せると
睡魔が俺の頭を支配した。

瞼が重くなってゆき、目を閉じると心地が良い。

あぁ、そう言えばクーが居たな。
客の前で寝るのは失礼。いや、もう寝てたか。

これは失態だな。
まぁいいか、今のこの部屋には酔っぱらいが二人いるだけだ。

気遣う必要も無く、考えることをやめて
本格的に身体を眠らせようとすると例の血の味が蘇って来た。

そしてフラッシュバックされる。

仲間、つーを殺した時を。つーが死んだと伝えた時の悲しみに満ちたフサの表情を、
そうして自らも死んでいくことになったフサの事を、死んでいった仲間達の事を―――――

戦場で起きた全ての事柄を―――


56 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 21:24:03.21 ID:jeDL7Wva0
ヘリが墜落してミンチとなった仲間
弾雨を浴びて蜂の巣となる仲間
斬り裂かれスライスされた仲間
爆撃を受けて5体全てがバラバラに散った仲間
頭に狙撃を受けて脳漿とも血とも分からない体液をばら撒いた仲間
散弾を受けて身体を吹き飛ばされた仲間
焼夷弾で生きながらにして焼き殺された仲間。

耳に残る甲高い銃声
戦車が仲間達を押しつぶして前進する駆動音
身体を震え上がらせるような恐怖を与える爆撃機の飛行する音
こちらを殲滅せんとする攻撃ヘリの羽音
爆薬が投下される落下音
ドップラー効果で接近する度に巨大になってくる砲声
助けを呼ぶ仲間の声、祈りを上げる仲間の声、痛みに叫ぶ仲間の声
肉を裂く音、肉を穿つ音、肉を打つ音、肉の焼ける音。

血の臭い、油の臭い、火薬の臭い、医薬品の匂い。

銃の感触、ナイフで人を切り裂いた時に残る感触
どんどん冷たくなっていく仲間の温もりの感触
弾丸が目前の地面に爆ぜた時の肌寒い感触
砲弾が殺傷効果範囲ギリギリの距離を爆発した時の背筋の凍る感触
仲間が狙撃されて狙撃されているという恐怖に置かれる感触。

草の味、砂の味、泥の味、およそ家庭の食卓に上ることはないであろう生物の味、
敗北の味、勝利の味。人の血の味。

―――――人の肉の味―――――



59 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 21:26:44.18 ID:jeDL7Wva0
******

一瞬のうちにして脳に刻まれた記憶が五感の全てを
通して蘇ってきて俺は固まることになった。

その一瞬で過去に立ち戻ったような感覚。

背筋は震えて身体中が凍り付き、寒くて寒くて凍えてしまいそうだ。

布団にがばっと包まるが
眠気など吹き飛んでしまっていた。

だが、眠ろうと瞼を閉じる。
しかし、過去は俺を寝かせてはくれない。

阿鼻叫喚が耳に蘇り
地獄絵図が目に蘇る。

すると、俺は戦場に立っていた。

荒野だ。

地面に銃が突き刺さり、ナイフが突き刺さり、ヘリの残骸が、
戦車の残骸が、人の残骸が転がる殺風景な荒野。

緑等の自然は一切なく
代わりに赤という人の血で塗り固められいた。


60 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 21:30:00.10 ID:jeDL7Wva0
無造作に転がる死体達。
中には白骨化した者も混じっている。

そして、見覚えのある敵が、味方がそこら中に転がっていた。
あまりにも生々しい映像に軽い吐き気を覚える。

何、いつものことさ。吐いたりしないよ。

この後のことはいつも通り……

すると、転がっている者達が全て
残らず全員が俺に向かって這いつくばってきた。

俺は囲まれる形になり、逃げる術は無い。

1人が俺の足を掴み、2人が俺の足を押さえ
3人が俺の体を掴み、4人が俺の体を押さえ
5人が俺の腕を掴み、6人が俺の腕を押さえる。

そうしてどんどん俺に集まってゆき
身体を埋め尽くさんばかりの死体に取り押さえられてしまう。

俺は首だけがその山の天辺に突き出していた。

だが、死者達は俺の頭に手を伸ばし
俺の歯を抜き取ろうと、鼻をもぎ取ろうと
耳を引き千切ろうと、目玉を抉ろうと、首を絞めようと
何百何千何万という腕が襲いかかってくる。


61 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです>>60鼻を?×鼻をもぎ取ろうと:2008/12/27(土) 21:35:17.22 ID:jeDL7Wva0
そして声を揃えて言う。

「何故お前だけが生き延びた!?
 何故俺が、僕が、ワシが、私が殺されなければならなかった!? 何故助けてくれなかった!?」

死者達の何故という問い。

俺はこれに対する答えをいくつも持っている。

だが、実際にこれだけの死者に対すれば
言葉など朗することは出来ず、ただ「すまない」としか言えなかった。

死者達のこの俺の答えに対しただ一言
「死んで詫びろ」と返してくるばかりだ。

そして俺は死ぬ。過去の亡霊たちに殺される。
原型など留められずに死ぬ。

その終わりに俺はやっと目が覚める。

だが、今日は死体の山の上を歩く者が居た。
艶やかな黒真珠のような美しさをもった長髪の切れ長な鋭い瞳の女性。

素直クールが死体の山の上をすたすたと
さも優雅に歩いているのだ。

彼女は俺の首の前まで辿り着くと
何も言わずに俺の頭を抱きしめた。

暖かい………


64 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです>>60鼻を?×鼻をもぎ取ろうと○:2008/12/27(土) 21:38:40.27 ID:jeDL7Wva0
******

(;A;) 「…………」

川 - ) 「………」

目を覚ますと、俺は泣いていて隣にはクーが眠っていた。

彼女の頬はほんのりと赤くなっており
まだ完全に酔いは抜けていないようだ。

これほど近くに居ればよく分かる。酒臭いな。

そう、彼女と俺の位置はとても近いのだ。
鼻と鼻がぶつかるかぶつからないかギリギリの距離だ。

途端、跳ね上がるかのように心臓が高鳴ってとても緊張した。

彼女は俺を正面から抱き抱えるようにして眠っている。
近くからではよく分からないが、きっとその姿は聖母にも似ていることであろう。

別に宗教に入信してるわけじゃないが、それ以外に比喩が思いつかない。

俺は、赤ん坊はこのようにして
母親の温もりを感じるのかと思考する。

だが、出来れば惚れた男が眠っていたのでつい抱きしめてしまったという展開が良い。
それはあり得ないな。恐らく俺はまたうなされていたに違いない。


65 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです>>60鼻を?×鼻をもぎ取ろうと○:2008/12/27(土) 21:41:06.46 ID:jeDL7Wva0
そして哀れに思ったクーは俺を抱きしめたと、そういうことであろう。
これじゃああやされている赤ん坊と変わりないな。

そう判断した俺はクーの腕を振り払おうとする。
組まれた腕が少し崩れるが、一瞬の内にその腕は組み直された。

すると、彼女は閉じていた瞼を開けて俺に声を掛ける。

川 ゚ -゚) 「おはよう。どんな夢を見ていたんだ?」

('A`) 「昔の夢かな」

川 ゚ -゚) 「昔の? 昔のどんな夢を見たんだ?」

俺は昔の夢とだけ言ってその場を流したかったのだが、
聞き難いことでもおくびもなく聞いてくる彼女には効果はないようだ。

更にクーは言葉を連ねる。

川 ゚ -゚) 「今朝のお前を見て驚いたよ。お前はすぐに隠したつもりだろうが銃を構えている時のドクオの顔、
      怖かったぞ? いや、相手に威圧感を与えるような恐ろしさじゃない。
      快楽殺人者の奴らみたいな不気味な恐ろしさだ」

「それに」と付け加えて、

川 ゚ -゚) 「再会した時から気付いていたんだが、
      お前はロクに眠れていないようじゃないか。体……大丈夫か?」

俺の瞳の奥を覗き込むようにして彼女は尋ねる。
クー………今お前俺が嘘を吐くか吐かないか確かめようとしてないか?


66 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです>>60鼻を?×鼻をもぎ取ろうと○:2008/12/27(土) 21:44:35.59 ID:jeDL7Wva0
だったらこう答えるしかない。

('A`) 「大丈夫だって、心配し過ぎだ」

クーが俺の目から何を読み取ったのかは分からないが、
彼女は一拍の間黙りこくる。口を開き、

川 ゚ -゚) 「そうか。話は変わるが、昨日のことをあの場に居合わせた者達を代表して謝罪と感謝を言いに来たんだ」

('A`) 「………昨日のねぇ」

俺達の職業は刑事だ。

クーは1課の刑事。俺は地方公務員のショボイ刑事。
そんな俺達が何故ここまでの交友関係にあるかと言えば単純だ。

昔、通っていた学校が同じだったというだけの
何の男女のロマンスもへったくれもない仲だ。

その学校、俺達の住む国軍事大国ニューソクの特色の詰まった軍学校。

5歳から18歳までの少年少女であれば誰であっても入学でき、
この国の孤児の大半はこの学校に詰め込まれることになる。

過酷とも呼べる訓練と戦闘技術と工学系の教育を中心に行う学校。
卒業する頃には皆熟練の老兵にも劣らない戦闘技術を持つこととなり、
大多数はそのまま兵士としてニューソク軍に組み込まれていく。

また、その中でも特に成績のいい者は≪VIPPER≫と呼ばれ
軍隊では特に優遇されており皆例外なく出世している。


69 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 21:47:42.81 ID:jeDL7Wva0
俺とクーはVIPPERだった。

そのままニューソク軍の兵士となっても良かったのだが
幼い頃に両親が死去した際に孤児となり、
少年兵としてニューソク軍に散々こき使われた身としてはそれだけは避けたかった。

だが、銃を握ることしか俺には取り柄もなく、
警察の機動隊に入れないものかと浅知恵ながらにそれを目指したのだが
戦闘技術の高さだけでVIPPERに選ばれ、頭の悪かった俺ではキャリアなんかには成れなかった。

一方、理由は学生の頃から聞いていなかったがクーも警察官を目指していた。
俺とは違い、彼女はすんなりとキャリア組の仲間入りを果たしたのだ。

その後連絡に連絡もとらずにいたのだがある事件をきっかけに再開することになり、
俺達はたまに飲んだくれるようになったのだ。

男女の仲などとは程遠い、酒臭い仲―――


70 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 21:50:46.51 ID:jeDL7Wva0
話が脱線してしまったが
とにかく俺は昨日、ショボイ刑事らしくショボイ事件について調べていた。

すると、偶然にも近くの銀行に多くのパトカーが止まっており
その場に居合わせた警官に問いただしてみるとテロリストがここを占拠したと言うのだ。

そして警官隊が突入したが、全滅してしまう。

激怒したテロリスト達は人質を殺し始めて表に居るヤジウマ達にすらも発砲し始めた。
状況は最悪だ。このまま時間がたてば更に多くの犠牲が出ることになろう。

さて、そこで俺が何者かということが重要になってくる。

俺は幼いころから戦場に身を置き、戦いのスキルと言うスキルを極めた元兵士。
懐にはナイフと手錠に警察手帳とハンドガン。

目前には阿鼻叫喚の地獄絵図。



71 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 21:53:39.70 ID:jeDL7Wva0
久しぶりに人に銃口を向けると俺の口腔には血の味が蘇り、
不気味な温もりと虚無感が胸の中に浮かび上がった。

俺は隣の建物から銀行の屋上に飛び移って侵入して
紆余曲折あったのだがテロリスト達を皆殺しにしたのだ。

テロリストには徹底抗戦、徹底殲滅がこの世界の常識。
奴らもなかなか鍛えられていたが、なかなかはなかなかの域を出ず、達人とは程遠いものである。

テロリストを片付け、
正面玄関から出てきた俺に対し遅れて登場した特殊部隊様は俺に向けて発砲しやがった。

その時に俺はあちこちに弾丸を食らったのだが、
運のいい事に軽い怪我で済んだ。

俺にテロリスト達について教えてくれた警官が俺の姿を見ると
大声を上げて特殊部隊様を止めてくれたのだ。

あの警官が奴らを止めるのが後少し遅ければ、
俺は殉職していたかもしれない。

まぁ、そんな感じのことが昨日あったので、
特殊部隊様を率いて現場にやって来たクー様は俺に謝罪してるというわけだ。


73 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 21:57:10.90 ID:jeDL7Wva0
ようは、今日俺の家を訪ねて俺に朝食を作ったのも酒を一緒に飲んだのも
こうやって嫌な夢を見た俺を抱き締めてくれたことも全ては点数稼ぎと言うわけか。

あぁ、俺は赤ん坊にも劣るらしい。

それもそうだな。赤ん坊は可能性の固まりだからな。
対して俺は“他人の可能性”を殺すことによって奪い尽くしてきたクソ野郎、
オマケに気の利いた会話すらも出来ない。俺の方が確実に劣っていると言える。

所詮はモテない男の夢だったわけだな。
まぁ、寝る時に見るのと違って良い夢だったよ。

川 ゚ -゚) 「すまなかった、私の観察力不足だった」

('A`) 「いいよ、過ぎたことだし、それに十分に報酬は貰ったから」

川 ゚ -゚) 「ん? 報酬? 労災でも申請したのか? 怪我は大丈夫か?」

('A`) 「フン、惚けんのならそれでいーさ」

俺はそう言ってクーの腕を再び解こうとするが、それが崩されることはない。
先程までの喜びは全て嫉みへと変わり、今ではとても汚く醜い物に思えた。


74 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 22:00:56.35 ID:jeDL7Wva0

川 ゚ -゚) 「なぁ、お前の見た昔の夢というのを教えてはくれないか?」

('A`) 「あんたに教える意味が?」

川 ゚ -゚) 「私に話してくれてお前の“不眠症”や悪夢が解消されるかもしれないなら意味はある」

('A`) 「何で俺が寝れねーことまで知ってんだよ? あんたの前で十分寝てたろーが」

川 ゚ -゚) 「酒に酔わないお前が、酔って眠るなんて可笑しいと思ってな。
      日に何度も寝なおすなんて睡眠不足の証拠じゃないか? それに悪夢にうなされてるときた、疑いの色は濃くなる一方だ」

('A`) 「悪夢? 人の昔の夢をよくも悪夢と括ってくれるな」

川 ゚ -゚) 「何をそんなに怒っているんだ?」

(#'A`) 「うるせー! 寝不足なんだよ、イライラもするわ!! テメーのせいで俺の休日は台無しだ!!」

そう言って「放せ」と言わんばかりに俺はクーを睨みつけた。
こいつが俺に与えている温もりは、過去につーが俺に与えた温もりのような不快感を感じる。

川 ゚ -゚) 「わかったよ……話してくれなくていい……腕も解く。
      その代りひとつ頼みを聞いてくれないか?」

('A`) 「なんだよ?」

聞いてやるつもりなど無いが、言葉の上だけでは聞いてみた。


76 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 22:03:51.95 ID:jeDL7Wva0

川 ゚ -゚) 「私を抱きしめてくれないか?」

('A`) 「あ? 俺をからかってそんなに楽しいか?
    テメーの点数稼ぎはもう終わったろーが。仕事の不始末は片付いたろ、とっとと帰れ」

今は、とにかく何を言われても信用できなかった。そう言った後で気づいてしまった。
俺はもしかして重要なチャンスを逃してしまったかもしれないと。

そして今の自分はどうしようもない捻くれたクズ野郎ではないのかと。

仕事を終えたクーはそのままこの部屋を出ていくかと思われたが
彼女は口に手を当て、何かを思考しているかのようだった。

やがて、手を口から外し、

川 ゚ -゚) 「仕事に点数稼ぎか、フフ。先程から何を尖っているのかと思ったが、成程そういうことか。
      そんなことだからお前はモテないんだ、妄想癖のある劣等感の塊の卑屈野郎め」

彼女は独白するように言い、だがな、と笑みを浮かべて続けた。

川 ゚ー゚) 「私は君のことが大好きなんだ。昔から変わらず鈍いな。フフフ、君に罰を与え私は罪を背負おう。
      君に誤解させてしまった罪として私は君を抱きしめ続けよう。君は誤解した罰として私を抱きしめ続けろ。
      お互いの温もりを感じ合いながらお互いの腕の中で眠ろう。ドクオ、私は君を愛している。どうか受け止めてくれないか?」

俺はこの時、無表情に徹していた。
クーにも負けるとも劣らない無表情を。

驚きすぎて表情を変えられないのだ。
まさに呆然としていると言うのが相応しいだろう。


78 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 22:06:07.59 ID:jeDL7Wva0
言葉も出なかった。
口に何かが引っ掛かってしまったかのように言葉が発せられないのだ。

俺は先ほどから全く働いていない頭を動かす。すると、俺はあることを思い出した。

俺はクーに合鍵を預けたのでは無く、
彼女の方から「私に預けてはくれないか?」と提案してきたのだ。

あぁー、そう言えばあの時も飲んでたな。
預ける意味がよくわからなかったが、今なら分かるかもしれない。

いや、やっぱ分かんないわ。
なんて理由で預けたんだ………?

まぁ、どうせ酒に絡むことだろう。

とりあえず彼女の背に腕を伸ばして体を寄せてみた。
身体中で彼女を受け止めるととても柔らかく、暖かく優しい温もりに包まれていった。

目を閉じると、直ぐに眠れた。


80 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 22:08:39.88 ID:jeDL7Wva0
******

今まで見てきた戦場は現れず、代わりとして俺は見知らぬ家の中に居た。

そこには、俺が居てクーが居て、そしてフサとつーが居て
俺達は酒を飲んで大騒ぎしていた。

テーブルを四人で囲み、つーが何やらフサに絡んでいる。
フサは少し困ったように応える。

なにやら子供を作るとかそんなことを話しているようだ。
そういえばつーは酔っぱらうとフサとよく惚気ていたな。

クーはそれを見て「ドクオ、私は何人産めばいい?」と聞いてくる始末だ。
問いを聞きつけたつーは「あんたに人間の彼女が出来るなんてあたし思ってなかったさ!」と快活に笑う。

フサがそれに対し「つーちゃんそれ言い過ぎ、ドクオにだって彼女ぐらいできるよ!」と反論。
「だってさー、365日ナイフやライフル磨いてる男だよ!? ガンパウダーが恋人みたいな奴だよ!?」

何か今すごく傷つくようなことつーに言われた気がするけど気にしない、突っ込まない。
「突っ込まないのか? そういえばお前はまだ私に突っ込んで来ないよな」クーの言葉をつーが聞くと、

「なに!? そっちなの!? 下の話なの!? それとも普通の話!? 童貞!!」
何だか最後の単語に異様に反応してしまうのは俺がモテナイ男である所以であろう。

「つーちゃん、下品な話は止めようね。お酒まずくなるよ」
フサが締めくくり、そして次の言葉に繋げる。

「それにドクオだってさ……もう2×歳だしさ……そんなわけない……よね?」
「自信無さそうに言うなよ」俺は今までその場を眺めるようにしていたのだが、ここで会話に加わった。


82 :('A`) ドクオは温もりを感じるようです:2008/12/27(土) 22:11:28.62 ID:jeDL7Wva0
そうすると、クーが俺の背後に回って
俺を後ろから抱き締めてくる。

彼女はそのまま俺を引っ張り、クーへと崩れていくような姿勢となる。
すると、彼女の頭が俺の頭上にきて若干見下ろすような形となった。

クーは俺の目を見て話しかけてくる。
眼の奥にある意思を見取ろうとする視線だ。

川 ゚ー゚) 「ドクオ、どうだ? 暖かいか?」

彼女は頬を緩ませて俺に尋ねた。

あぁ……美人のくせに、エラく可愛いとこもあんだな。美人で可愛い、反則だ。

女性の体からは良い匂いがする物だと聞くが
彼女はあまりにも酒臭かった。

そしてこの場はあまりにも騒がしい。

そういえば寝る前のクーも酒臭かったな
だからこのような夢を見てしまったのかもしれない。


しかし、これはこれで…………暖かい―――――
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  1. 2008/12/28(日) 00:44:57|
  2. ブーン系小説(短編)
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